今回は、ITの活用に関する部分から第25条(ITの活用)について条文のポイントを解説していきます。
以下 甲:管理組合 乙:管理会社となります。
(ITの活用)【新設】
第25条 甲又は乙は、あらかじめ、相手方に対し、その用いる電磁的方法の種類及び内容を示した上で、その承諾を得た場合は、本契約に規定する書面及びその事務処理上必要となる書面を電磁的方法により提供することができる。
2 乙は、甲の承諾を得た場合は、第10 条(管理事務の報告等)第1項及び第3項に規定する報告その他の報告をWEB 会議システム等(電気通信回線を介して、即時性及び双方向性を備えた映像及び音声の通信を行うことができる会議システム等)により行うことができる。
(改訂の解説)
甲乙双方が予め承諾していれば総会や理事会の会議をWEB上で行ったり、連絡や報告を電磁的方法により行うことができることが明文化されました。また、甲の承諾を得た場合には管理事務の報告も対面によらずに行うことができるようになります。管理事務の報告は、通常総会や理事会開催時に同時に行うことが多いのでWEB総会や理事会を導入している管理組合でも二度手間となることがありません。
最近、マンション管理業界における担い手不足が問題となっていますが、ITを活用することで事務処理の効率化ができ、スムーズな対応が期待できます。
管理組合役員や組合員は、日中仕事をしているため電話に出られなかったり、会議に出席するのが難しいといった場合も多いので、スマートフォンからWEBフォームにアクセスし、相談や問い合わせをする、平日仕事が終わった後にWEB上から理事会へ出席できるようになるなど管理組合側の利便性も向上します。
なお、この契約内容は、「行うことができる」の契約であり、「行わなければならない」との契約ではありませんので、委託契約書に押印したとしても、「その承諾を得た場合」になります。管理会社の効率化や会議に出席できない役員等の利便性などを考慮することは有益ですが、書面での提出がないことで、管理組合組織としての理事会・総会での効率・効果が悪化するようですと、管理組合にとっては有害となりかねません。管理会社と書面提出との併用についても十分協議し、組合運営に支障が無いようにすることが重要です。
管理委託契約に疑念や不安がありましたら、お気軽にご相談ください。
マンション管理士 長濱 千奈美